今回は、不動産売買仲介のトップ営業担当が実践している、お客様の「真の購入理由」を聞き出す営業手法と、お客様の「条件」と「思いつき」を見極める営業手法について考えてみたいと思います。
不動産営業では、お客様の希望条件を聞くことが正解なのか?
通常、不動産会社に「買い」お客様が来店された場合、普通の営業担当者は次のように応対します。
「いらっしゃいませ。どのような物件をお探しですか?中古の分譲マンションをお探しなのですね。どちらの駅を利用されますか?ちなみにご希望の間取りや平米数をお聞きしてもよろしいでしょうか?ご予算はどのくらいですか?」
そして、希望物件があればスグに案内し、その物件が決まらなければ長期追客に入りますよね。
その後はレインズをチェックする等して、お客様の希望物件が売りに出てくる時を待つことになる・・・って感じが一般的ではないでしょうか。
しかし、私が出会った某トップ営業担当の接客は少し異なります。
トップ営業担当は「何故、家を買いたいのか」を徹底的に聞く
このトップ営業担当は、来店された「買い」お客様に対し開口一番、次のように質問します。
「何故、家を買おうと思われたのですか?」
そして、お客様が「結婚するので新居を探しております」と答えたとしましょう。
普通の営業担当者ならここで「ご結婚ですか!おめでとうございます。では、素敵な新居を見つけましょう」等と言って、スグに物件条件の聞き合わせに移ります。
しかし、私が出会った某トップ営業担当の接客は、ここからも更にもう一段階深掘りします。
「賃貸ではなく、なぜ購入するのか」まで質問を深める
「賃貸ではなく、なぜ購入しようと思われたのですか?」
この質問に対し、お客様が「だって、家賃が勿体無いですから」と答えられたとしても、まだまだ深掘り質問は続きます。
「家賃は掛け捨てと言いますが、持ち家も維持費等がかかる上に、経済状況によっては大幅に価値が毀損する事もあります。一概に購入が良いとは言えませんが、それでも購入を希望されますか?」
このように質問をドンドン深めて行く事により、お客様の「真の購入理由」に辿り着く事が出来るのです。
例えば・・・「結婚が決まった事により物件探しを始められたご主人様は、幼い頃お父様を亡くされ、お母様は家賃の支払いに窮していた。不動産を購入しておけば、自分が死んだ時にローンが保険で抹消されると聞いたので、妻や将来産まれてくる子供のために、賃貸では無くて購入しておきたい。」と言った感じです。
真の購入理由を満たす物件を営業担当者が提案する
そして、このトップ営業担当は、このように「真の購入理由」にたどり着いた後は、希望エリアや希望物件のヒアリングを行いません。
「真の購入理由」を満たす物件を全力で探しだし、営業担当側からお客様に対し「○○駅5分のところにあるマンションが、2580万円で売りに出たので、この物件を検討してはいかがですか」と提案を行います。
つまり、お客様からお聞きした「最寄駅・広さ・間取り」の物件を探すのではなく、お客様の「真の購入理由」を聞き出した後は、「最寄駅・広さ・間取り」も営業担当自身が提案するという「逆パターン」で営業を行っていることになりますね。
このトップ営業担当曰く
「客が買う家はこの俺が決める。客の条件は聞かない。しかし、何故、家を買いたいかについては徹底的に聞き出す」
なかなか高度なヒアリング能力と、豊富な物件情報が必要になる手法ですが、「不動産のプロ」を名乗る以上、このような提案手法こそあるべき姿なのかもしれません。
お客様の条件を「上っ面」だけ聞きだし、何回案内しても決まらず、結局は「他決」してしまう営業担当が多い中、このような営業手法をとれる営業担当は「格好良いなぁ」と思ってしまいます。
お客様の「条件」と「思いつき」を見極めよ!
さて、お客様の「真の購入理由」を聞き出すことの重要性についてお話ししましたが、ここでもう一つ、考えて頂きたいことがございます。
それは、お客様が口にされる様々なご要望を、どのように捉えるべきかということです。
ある私の知り合いである某不動産営業部長は常々、部下の営業担当者に対し「顧客の条件と思いつきを見極めよ!」と伝えておられます。
「条件と思いつきを見極める」と言われても、いまいち、ピンと来ないかも知れませんね。
では、具体例をお示ししながら、この言葉の持つ意味を解説して参ります。
駐車場の空き状況を調べて欲しいと言われたら?
不動産の案内シーンで、あなたは次のような場面に出くわしたことはありませんか。
営業担当:ご覧頂いたマンションは如何でしたか?
お客様:なかなか良い物件だったね。ところで敷地内駐車場に空きはあるの?
営業担当:いえ、空きはございませんので、近隣で借りて頂く事になります。
お客様:そうなのか、じゃ、近隣駐車場の空き状況を調べておいて貰えるかな?
営業担当:承知しました。お調べした上でご報告致します。
一見普通の会話ですよね。
まぁ、本来であれば案内前に近隣駐車場の空き状況くらいは調べておくべきでしょうが、業物(先物)への案内の場合であれば、事前に確認出来ない事もあります。
そして、営業担当者が「近隣駐車場の空き状況」を調べて、再度お客様に連絡を取った時には、次のようなシーンをよく目にします。
営業担当:先日ご依頼頂きました、近隣駐車場の空き状況を調べて参りました。
お客様:ありがとう。それでどうでしたか?
営業担当:マンション隣の駐車場に空きがございまして、駐車場代は月額12,000円でした。
お客様:空きはあったのですね。調べてくれて有り難うございます。
営業担当:駐車場確保の見込みがつきましたので、物件のご購入も前向きに検討頂けますか?
お客様:そうだね・・・。又、検討して連絡するよ。
営業担当:はぁ・・・。では・・・ご連絡お待ちしています。
上記の様な場合、お客様から後日連絡が入る事は殆ど無いでしょう。
お客様の質問が購入のための「条件」とは限らない
この会話例をご覧になって、「何がいけないの?」と思われたかたは多いかもしれません。
「こんなやりとりは、不動産の営業シーンでは普通にある事だし、お客様から駐車場の有無を確認するよう依頼されたら、調べて報告する事が営業担当者としての仕事だよね」との感想を抱かれた方は、考え方を少し変えて頂く必要があるかも知れません。
上記の営業担当者は、お客様からのご要望にしっかりと応じました。しかし、成約には結びつきませんでした。何故、こんな事になってしまったのでしょう?
その原因は、営業担当者が「お客様の思いつき」を、「購入のために超えるべき条件である」と勘違いしたからだと私は考えます。
つまり、このお客様は駐車場が空いていようが、空いていなかろうが、どちらにしても本物件を購入する気はなかったのです。ただ何となく「駐車場は空いているのかな」と思い、その疑問を何となく口にしただけだったのです。
しかし、その「駐車場は空いているのかな」という台詞を聞いた営業担当者は「駐車場さえ確保出来れば購入して頂ける」と早合点し、貴重な営業時間を割いて調査した結果、全くの無駄骨になってしまいました。
購入につながる「条件」かどうかを確認することが重要
不動産の営業シーンにおいては、お客様から様々なリクエストを受けます。その中には、営業担当として当然お応えすべき事柄もありますが、「特別に時間をとって調べる必要がある事」を求められた場合、そのリクエストをクリアさえすれば購入頂ける「条件」なのか、なんとなく口から出た「思いつき」なのかを、お客様に確認するようにして下さい。
上記の会話例で申し上げるなら「では、駐車場の空き状況について調べて参りますが、駐車場の確保が出来れば、商談を前に進めるという事で宜しいですね。又、月額駐車料金の許容範囲はおいくらまでですか?」と、お客様にお聞きすべきでした。
そして、お客様から「近隣で月額15,000円以内の駐車場が確保出来れば買います」とのお言葉を頂戴出来れば、必死で空き状況を調べるべきであり、「いやいや、そんなつもりで駐車場の事を聞いた訳ではありません」という事であれば、駐車場を調べる必要はございません。
「自らが動く事を厭わない」のは美しい営業姿勢のように感じますが、無駄にバタバタ動き回る事はくれぐれも慎んで下さい。
効率よく営業成績を上げる為には、お客様の「条件」と「思いつき」を見極め、営業の無駄を省く事が大切です。
トップ営業に学ぶ不動産営業術とは?
今回ご紹介した二つの営業手法には、共通する考え方がございます。
一つは、お客様が口にされる希望条件を聞くだけでなく、「何故、家を買いたいのか」という真の購入理由を徹底的に聞き出すこと。
そしてもう一つは、お客様からのリクエストを何でも購入条件だと考えるのではなく、それが本当に購入につながる「条件」なのか、単なる「思いつき」なのかを見極めることです。
お客様のご希望を一生懸命に聞き、物件を探し、調べ物をする。これだけであれば、誰にでも出来る営業活動なのかも知れません。
しかし、お客様が何故その家を必要とされているのかを知り、その理由を満たす物件を自ら提案する。そして、購入に必要な条件を見極めた上で営業活動を進める。
このような営業が出来る担当者こそ、トップ営業と呼ばれる存在なのでしょうね。
ただし、これらの営業手法を実践するには、高度なヒアリング能力と豊富な物件情報が必要になります。
お客様の条件を聞かずに物件を提案するなど、誰にでも出来ることではありません。
だからこそ、日々の営業活動の中で、お客様の「真の購入理由」を聞き出す力と、「条件」と「思いつき」を見極める力を磨いて頂きたいと思います。
株式会社レコ
不動産業専門コンサルタント
梶本幸治
本稿は、株式会社レコ 梶本幸治が不動産売買仲介の仕入れ営業・販売戦略などについて独自の思想と実務経験に基づき執筆した著作です。
本稿は、不動産・住宅関連業界向けの情報サイト「リビンMagazine Biz」に掲載された梶本のコラムを、必要に応じて改題・加筆・統合・修正のうえ再掲したものです。
再掲の経緯については、お知らせ欄の「リビンMagazine Biz(運営:リビン・テクノロジーズ株式会社様)掲載コラム再掲のお知らせ」をご覧ください