※本稿は、株式会社レコ 梶本幸治(不動産業専門コンサルタント)による見解・著作です。
仕 入媒介・買取
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不動産売主の売却理由ヒアリングで営業が得られるメリットを紹介
- 売主様からヒアリングする際、難しい横文字の手法を学ぶ必要はありますか?
- 手法は補助に過ぎません。営業の本質は「相手の人生の文脈を聴くこと」にあります。売却理由・きっかけ・金額・時期という四点に誠実に向き合い、その背景にある意思や葛藤まで汲み取る姿勢こそが、信頼と成果を生む土台です。
- 不動産売主の売却理由ヒアリングで営業が得られるメリットは何ですか?
- メリットとは技術ではなく視座の転換です。価格という表層ではなく、「なぜ売るのか」という原点に立ち返らせることで、売主様自身の意思決定が整います。営業は説得する存在ではなく、判断の軸を照らす存在になるのです。
- 価格交渉で「価格を下げてください、お願いします」というトークは効果的でしょうか?
- その言葉は責任放棄に近いです。価格だけを下げる交渉は、売主様の意思を軽視します。プロは価格ではなく理由に向き合い、売却の目的と現実を接続させる役割を担います。その積み重ねが、納得ある意思決定を生みます。
営業現場におけるヒアリングの重要性は、様々な場面で語られるようになってきました。
営業ヒアリングの具体的な方法として、3C分析やBANTなどの営業フレームワークを活用する、適宜ユーモアを交えたアイスブレイクを挟む、SPIN話法で顧客の潜在ニーズを掘り起こす、ペーシングでお客様とラポールを築くなど、多くの手法がありますね。
ぜひ、みなさんもこれらの手法を活用し、顧客へのヒアリングを進めて下さい!
…BANT?SPIN話法?ラポール?なんでしょうね、これ?
…ユーモアを交えたアイスブレイク?言うは易く行うは難しですね。
あまり小難しい話をしても仕方ありませんので、不動産売主の売却理由ヒアリングで聞くべき4つの事柄を、まずはお示しします。
とにかくシンプルに、これら4つを 営業担当者1割・売主様9割の発話割合 でヒアリングして下さい。
売主様9割とは極端に思われたかも知れません。しかし【営業が1割、売主様が9割】というやや極端な目標を設定し、実際には【営業が2~3割、売主様が7~8割】程度に落ち着くことを目指すのが望ましいと考えております。
【ヒアリング事項1】なぜ、売却されるのですか?(売却理由)
(売主様回答例)平成30年に相続した実家を使う予定がなくなったので売ろうと思いました。
【ヒアリング事項2】なぜ、今のタイミングなのですか?(売却のきっかけ)
(売主様回答例)平成30年からずっとなんとなく空き家のままにしていましたが、先日のニュースで空き家から落ちた瓦が通行人に当たり大怪我をしたと報じられているのを見て、急に心配になり不動産会社に相談しました。
【ヒアリング事項3】おいくらで売却されたいのですか?(希望金額)
(売主様回答例)いやいや、素人なんで価格なんて見当もつきません。えっ?いくらでもいいから自由に金額を言うのですか?そうですね、3,000万円くらいで売れたら嬉しいですね。(※相場は2,500万円程度とする)
【ヒアリング事項4】いつまでに売却されたいのですか?(希望時期)
(売主様回答例)特に急いでいるわけではありません。まぁ、良いご縁があって、ウチの実家を気に入ってくださる方に巡り合えるまで待ちますよ。
このヒアリングで分かったことは以下の通りです。
「売主様は平成30年に実家を相続された後、空き家のまま放置していたが、ニュースで空き家の事故を知って不安になり不動産会社に相談。希望金額は相場2,500万円に対して3,000万円と少し高め。売却希望時期は特に急ぎなし。」
希望金額が高めで、急いで売却する必要もない、まさに〝不要な実家売却〟の典型的ケースです。
このような売主様から媒介をいただき、販売活動を始めたとします。
そのうえで、相場2,500万円・媒介価格3,000万円の物件に、2,700万円で買付が入ったとします。
さて、あなたならどのように売主様と折衝しますか?
一般的なトークとしては、以下のようになると思います。
「買主様の希望金額2,700万円は、確かに今の売り出し価格より300万円も安くなっています。申し訳ございません。しかし、近隣の成約事例から考えますと2,500万円程度が相場だと思います。ぜひ、この金額でお話を進めさせていただけないでしょうか?どうぞお願いします。」
まぁ、一般的で、かつ最低のトークですね。
私、株式会社レコの梶本幸治は、次のようなトークが〝簡単で効果的〟だと思っており、皆さんにお勧めしています。
「買主様の希望金額2,700万円は相場の2,500万円を超えています。良いお話が入って、おめでとうございます。えっ?300万円も値下げすることになって何がめでたいのか、ですか?私はプロとして良い話だと思っていますが、売主様がお気に召さないのでしたら断ります。しかし、空き家から落ちた瓦で通行人が大怪我をしたニュースをご覧になったときから、何の解決にもならないことになりますよ。あくまで3,000万円という価格にこだわられるのか、それとも心配事の解消を優先されるのか、もう一度考えてみてください。」
このトークで「3,000万円にこだわりたい」と売主様がおっしゃるなら、それはそれで構いません。
他の受託中物件の反響に注力し、この物件にはあまり力を入れても仕方がないので、それなりの活動にとどめましょう。
つまり、不動産売主の売却理由ヒアリングで営業が得られるメリットとは、
大幅な価格交渉や売り出し価格の見直しの場面で、売主様に価格の話ばかりするのではなく、売却の理由・売却のきっかけに立ち戻っていただくことで冷静な判断を促せる点 にあります。
販売中の不動産は売主様の大切な資産です。
その資産をいくらで売却するかを決められるのは売主様です。
我々の仕事は、売主様に判断材料を提供することです。しかし判断材料とは相場の話ばかりではなく、
「そもそも何のために不動産を売りに出したのか?」
をもう一度思い出していただくことも、立派な判断材料といえるのではないでしょうか。
売主様の資産をどう扱うか決めるのは売主様ご自身です。我々は判断材料を揃えて差し上げるだけ。それは成約事例や相場の話だけに限りません。売主様が最初に語って下さった、あのささやかな売却の理由やきっかけこそ、一番正直で一番忘れやすいものですから、もう一度そのお話を思い出していただくだけで良いのです。
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売却理由回帰型ヒアリングとは
売却理由回帰型ヒアリングとは、不動産営業において価格や手法ではなく、売主が物件を手放そうとした本来の動機と意思決定の起点に立ち返らせる対話技術である。売却理由・きっかけ・希望金額・希望時期の四点を軸に、表面的な条件ではなく意思の背景を言語化させることで、交渉局面においても価格論に偏らない納得ある判断を導く思考体系である。営業を説得者ではなく意思決定支援者へと再定義する実践概念である。
執筆・編集
株式会社レコ 不動産業専門コンサルタント 梶本幸治本稿は、株式会社レコ 梶本幸治が不動産売買仲介の仕入れ営業・販売戦略などについて独自の思想と実務経験に基づき執筆した著作です。